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公開日:2023.12.05
更新日:2023.12.05

特許ってどのくらいの期間で権利化できるもの?

特許出願後、どのくらいで権利化できるのかという質問を受けることがあります。もちろん案件によってその期間は異なりますが、スムーズな場合でも大体1年~1年半くらいはかかります。

以下では、この期間を構成する処理や、この期間を短縮するためのポイントについても触れていきます。

1.特許出願後に必要な手続き

1-1.出願審査請求

特許出願したら自動的に特許庁で審査が始まって何らかの通知が来る、というわけではありません。意匠や商標では現在そのようになっていますが、特許では権利化が必要な場合、出願審査請求を行う必要があります。

特許は内容が複雑なものも多く、審査に時間がかかります。また、出願人が権利化を希望しないものの、競合他社を牽制するための特許出願(いわゆる防衛出願)なども多く出願されています。

そのため特許庁は審査処理の効率の面から、出願人が(審査請求費用を払ってでも)権利化する意思のある出願のみを審査するというスタンスを取っています。現行の特許法において、特許権を取得したい場合、出願人は出願の日から3年以内に出願審査請求を行わなければなりません。

出願審査請求の費用は202312月現在、通常の国内出願の場合、138,000円+(請求項の数×4,000円)となっています。決して安くはありませんが、こちらの費用を支払うことにより、特許庁の審査官による審査が行われることになっています。

なお、出願審査請求の費用については、特許庁HPの以下のページで自動計算もできます。
手続料金計算システム

 

1-2.出願審査請求を行うベストなタイミングとは?

出願審査請求の請求期限は出願の日から3年と長いですが、いつ行うのがよいのでしょうか。

権利化までには時間がかかるため、早期に権利化したい場合や権利化を強く希望している場合には、早めに審査請求を行うことをお勧めします。出願審査請求を行うと特許庁において順番に審査がなされるのですが、審査請求日から審査が開始されるまで1年くらいかかることも少なくありません。

一方、権利化するかどうか迷うような場合には、出願の日から3年以内にその技術を利用するかどうか、資金面等も含めて判断すれば問題ありません。

ただし、特許出願件数が多く、技術開発が活発な分野では、1年経つとその技術が陳腐化してしまうというようなケースもありますので、注意が必要です。

また、特許では、早期の権利化を希望する場合に、一定の要件の下、早期審査を申請することが可能です。早期審査が認められれば、現状、早期審査の申請から約3か月以内に特許庁から何らかの通知を受けることが可能であり、通常の審査と比べる審査待ちの期間をかなり短縮することができます。早期審査の要件などについては特許庁HPの以下のページで説明しています。
特許出願の早期審査・早期審理について

権利化までの期間を短縮するためのポイント➀

  • 権利化を強く希望する場合には、出願審査請求を早めに行う
  • 早期審査の申請要件を満たすかどうか確認し、可能な場合には早期審査を申請する

 

2.特許庁からのアクション

2-1.拒絶理由通知

審査において、特許出願に特許を受けることができない理由(拒絶理由)が発見された場合、拒絶理由通知が通知されます。

拒絶理由には様々な種類がありますが、現在、ほとんどの出願が拒絶理由通知を受けています。したがって、冒頭で述べた「スムーズな場合でも大体1年~1年半くらい」という権利化までの期間は、拒絶理由通知を受けることを前提として算出しています。

拒絶理由通知において指定された期間内(国内居住者が出願人の場合、拒絶理由通知の発送日から60日以内)に応答することが必要です。

 

2-2.拒絶理由通知への応答

拒絶理由通知の内容を確認したら、応答の準備を行います。拒絶理由通知への応答では通常、意見書や、必要に応じて手続補正書を提出します。

拒絶理由通知への応答は、拒絶理由を解消しつつ希望する権利範囲の取得ができるよう慎重に行います。早期に進めることを意識するあまり、十分に検討できていない状態で応答すると再度の拒絶理由通知や拒絶査定を受けてしまい、却って権利化までの期間が長期化する恐れもあります。

応答後、大体1か月~4か月程度で次の通知が出ます。拒絶理由が解消した場合は、登録査定の謄本が送達されます。

権利化までの期間を短縮するためのポイント②

  • 拒絶理由通知への応答を慎重に行うことにより、スムーズな審査を目指し、最終的な早期権利取得に繋げる

 

3.審査着手までの期間の調べ方

ここで、出願人側で短縮することができない期間といえば、特許庁内での審査着手までの期間です。

この期間は、先に触れた早期審査を利用することができれば大幅に短縮することが可能ですが、早期審査の申請にはいくつかの要件があるため、利用できない場合があります。

そのため特許取得にかかる期間を予想して知財戦略を立てるようなときには、通常審査の場合の審査着手までの期間を考慮しておくのが安全です。

現在、特許庁HPの以下ページでは、出願審査請求がされている特許出願について、審査着手の見通し時期を公開しています。
特許審査着手見通し時期照会について

審査着手の見通し時期について、202312月現在では「202XX月~202XX月」という風に数か月間の幅を持たせてざっくりと記載してあります。早いものでは審査着手日が審査請求日から半年程度~1年程度のものもありますが、審査着手日が審査請求日から1年程度~1年半程度のものもあるようです。

また、審査着手予定時期や審査着手後の状況を具体的に知りたい場合には、特許庁に「審査状況伺書」を提出することにより、回答を得ることができます。

 

4.まとめ

特許の権利化までにかかる期間とその手続きについて説明してきました。

早期権利化を希望する場合に考慮すべきポイントは以下の通りです。

  1. 出願審査請求を早期に行い、可能であれば早期審査を利用する
  2. 拒絶理由通知への応答は慎重に行う

上記のポイントを考慮すると、審査や応答がスムーズな(例えば、拒絶理由通知が1回のみで、かつ延長等を利用しない)場合、権利化までの期間は大体以下のようになると思われます(202312月時点)。

  1. 出願後すぐに出願審査請求、早期審査を利用する場合=半年~1年弱
  2. 出願後すぐに出願審査請求、通常審査の場合=1年~1年半程度

ただし、分野や年によって上記の期間は前後すると思われますのでご注意ください。

なお、上記の期間は弁理士が対応した場合の期間になります。早期の権利化を希望する場合には、弁理士へご相談ください。相談はこちら

弁理士 由利 尚美

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