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公開日:2024.07.03
更新日:2024.07.04

弁理士の料金・費用は?相場はある?弁理士が詳細に解説

特許や商標について相談や依頼をしたい場合、知的財産の専門家である弁理士に相談するのが一般的です。
しかし、相談や依頼をはじめてする場合、一体どれくらいの料金がかかるのか、予想がつかない人は多いと思います。
このコラムでは、弁理士に相談や依頼をした場合にかかる費用について、弁理士が詳細に説明します。

1.弁理士費用の種類

最初に、弁理士に相談・依頼をするときにかかる弁理士費用の種類について説明します。

知的財産について弁理士に相談や依頼をすると、①手数料、②謝金、③実費が主な費用として発生します。以下、順番に説明していきます。

 

(1)手数料

手数料は、弁理士の作業に対して発生する報酬です。そのため、作業量に応じて金額が変わります。特許庁に対する緒手続きの手数料や出願基本料などは、一般的に料金を定めている事務所が多いです。これに対し、調査や出願原稿の作成など、案件によって作業量が大きく変動する作業については、単価を定めていることが多いです。ただ、最近はそれらの料金についても定額にしている事務所もあります。

なお、平成13年施行の新弁理士法以前は、日本弁理士会が定めた「弁理士報酬額表(特許事務標準額表、料金表)」によって弁理士の報酬(手数料、謝金)は一律に定められていましたが、新弁理士法によってこれが廃止されたことにより、現在は事務所が独自に報酬を設定しています。

 

(2)謝金

謝金は、出願が登録されたときや特許査定を受けたときなどに発生する成功報酬です。特許、商標の出願が登録されたときに発生する謝金は、定額の場合もありますが、定額分に加えて請求項数や分類数に応じた従量分がある場合もあります。

最近は、出願時の手数料をパック料金にして謝金をとらない事務所もあります。

 

(3)実費

実費は、出願料や出願審査請求料、登録料など、特許庁に支払う費用のほか、打合せのための交通費など、実際に要した費用です。打合せのための少額の交通費などは請求されないこともあります。

特許庁に支払う料金は、「産業財産権関係料金一覧」として特許庁のウェブサイトに記載されています。特許庁に支払う費用にも、特許や実用新案の出願料のように一定の費用があるほか、特許の出願審査請求料や商標登録出願料のように請求項数や区分数に応じて変動する費用があります。

 

2.業務別弁理士費用の相場

弁理士費用は、弁理士が行う業務ごとに手数料が定められています。主な業務内容として、①特許出願、②商標出願、③意匠出願、④調査、⑤コンサルティングなどがあります。

また、上記のように各業務の主な費用には、手数料や謝金、実費といった弁理士に対する報酬(弁理士費用)と、特許庁に支払う費用(以下、特許庁費用という)とがあります。

さらに、これらの費用は一時に発生するのではなく、手続きの進捗に応じて異なるタイミングで複数回にわたって発生します。

以下、各業務の費用の相場を、弁理士費用と特許庁費用とに分けて、また発生する時期に分けて、順に説明していきます。

なお、弁理士費用については、日本弁理士会が弁理士から得たアンケートの結果をまとめて公開しています。アンケートは平成2110月に実施したもので最近のものではありませんが、費用の傾向が見て取れます。「弁理士の費用(報酬)について」(日本弁理士会)

 

(1)特許出願の費用相場

特許出願をした場合、費用は出願時、審査請求時、登録時、維持更新時などに主に発生します。(拒絶理由通知を受けた場合、それに対応した時にも通常は費用が発生します。)

ここでは、一般的なモデルケースの発明(難易度や記載ボリューム等が平均的な発明)について特許出願をして、拒絶理由通知を受けることなく許可、登録された場合を例にして費用相場を説明します。

特許庁費用は請求項数によって決まります。ここでは請求項数を10として計算します。

特許出願 出願時 審査請求時 登録時
(3年分の特許料納付)
維持更新時 合計
(維持費は第4年まで)
特許庁費用 1万4千円 17万8千円 2万1千9百円 1万8千3百円/年
(年を追って上がります)
約23万円
弁理士費用 20万円~
40万円
無料~
1万円
1万円~
20万円
5千円~
1万5千円/回
約30万円~
60万円程度
合計 21万4千円~
41万4千円
17万8千円~
18万8千円
2万9千円~
21万9千円
2万4千円~
3万4千円/回
53万円~
83万円程度

※請求項数を10としています。

弁理士費用の合計額の下限は、各費用発生時の下限額の合計よりも高くなっています。これは、一般に出願時の費用が安い場合は登録時の費用が高く、逆に出願時の費用が高い場合は登録時の費用が安く設定されるためです。つまり、出願時の費用も登録時の費用も相場の下限を期待するのは難しいと考えてください。

拒絶理由通知を受けた場合、それに対処しないと拒絶査定を受けますので、必要な手続き(意見書又は、意見書・手続補正書の提出)を執る必要があります。拒絶理由通知は、発行されないこともありますし(この場合そのまま特許査定を受けます)、1回発行されることも、2回以上発行されることもあります。拒絶理由通知を受けた場合には、その都度、5万円~15万円程度の弁理士費用が発生することが多いです。

よって、特許庁費用を合わせると、特許出願から登録までには合計で約50万円~100万円超の費用がかかることになります。

なお、特許出願の特許庁費用については、中小企業等を対象に、審査請求料・特許料(第1年分から第10年分)についての減免措置が講じられており、一定の要件を満たす場合はこれを受けることができます。特許料の減免制度については、特許庁の該当ページをご確認ください。「特許料等の減免制度」(特許庁)

 

(2)商標出願の費用相場

商標出願をした場合、費用は出願時、登録時、維持更新時などに主に発生します。(拒絶理由通知を受けた場合、それに対応した時にも通常は費用が発生します。)

ここでは、標準文字の商標を1区分について商標登録出願をして、拒絶理由通知を受けることなく許可、登録された場合を例にして費用相場を説明します。

商標は基本的には登録期間が10年であり、10年ごとに更新します。下の表には、出願から登録までの費用の合計と、さらに1回更新した場合(つまり、20年間維持した場合)の費用の合計とを記載しています。

商標出願
(一括納付)
出願時 登録時
(10年分)
登録まで合計
(10年維持の費用)
維持更新時
(10年分/回)
合計
(更新1回、20年維持)
特許庁費用 1万2千円 3万2千9百円 4万4千9百円 4万3千6百円 約8万9千円
弁理士費用 2万円~
6万円
1万円~
5万円
4万円~
10万円
5千円~
2万5千円/回
約6万円~
12万円程度
合計 3万2千円~
7万2千円
4万3千円~
8万3千円
8万9千円~
14万9千円
4万9千円~
6万9千円/回
15万円~
20万円程度

「商標を登録したけけど10年も使うかわからないので、初期費用をなるべく抑えたい。」という場合もあると思います。このような場合、登録時に5年分の登録料を支払い、5年後に維持をしたい場合のみに後期の5年分の登録料を支払うことも可能です。

この場合の費用を以下の表に示します。表には、登録期間を10年として登録するまでの費用と比較できるように、登録までの合計(5年間登録を維持する費用)を左側に、10年間登録を維持する場合の合計を右側に示します。

商標出願
(分納)
出願時 登録時
(5年分)
登録まで合計
(5年維持の費用)
維持更新時
(後期5年分)
合計
(10年維持の費用)
特許庁費用 1万2千円 1万7千2百円 2万9千2百円 1万7千2百円 約4万6千4百円
弁理士費用 2万円~
6万円
1万円~
5万円
4万円~
10万円
5千円~
1万5千円
約5万円~
11万円程度
合計 3万2千円~
7万2千円
2万7千円~
6万7千円
6万9千円~
12万9千円
2万7千円~
3万2千円
9万6千円~
16万円程度

登録時に前期5年分のみの登録料を支払うことにより初期費用(登録までの費用)を抑えることができます。一方、10年維持する場合には、10年分を一括納付した上の場合よりも若干高くなります。

1区分について商標登録出願をして10年間維持する場合、合計で約9万円~16万円の費用がかかり、20年間維持する場合、合計で約15万円~20万円の費用がかかることになります。

 

(3)意匠出願の費用相場

意匠登録出願をした場合、費用は出願時、登録時、維持更新時などに主に発生します。(拒絶理由通知を受けた場合、それに対応した時にも通常は費用が発生します。)

ここでは、出願人から図面の提供があり、それを利用して意匠図面を用意した場合の意匠又は部分意匠について意匠登録出願をして、拒絶理由通知を受けることなく許可、登録された場合を例にして費用相場を説明します。(拒絶理由通知を受けた場合、それに対応した時にも通常は費用が発生します。)
※意匠図面の作成に3時間程度かかる場合

意匠出願は1意匠1出願の原則がありますので、図面作成時間に変動がない場合は費用に変動はなく、相場の幅は各事務所の費用設定のみということになります。

意匠出願 出願時 登録時
(3年分の登録料納付)
維持更新時 合計
(4年目登録維持まで)
特許庁費用 1万6千円 約2万5千5百円 約1万6千9百円/年
(第25年まで一律です。)
5万8千4百円
弁理士費用 6万円~
12万円
1万円~
8万円
5千円~
1万5千円/回
約10万円~
20万円程度
合計 6万6千円~
13万6千円
5万5千円~
10万6千円
2万2千円~
3万2千円/回
約16万円~
26万円程度

意匠登録出願においても、出願時の費用が安いからといって登録時の費用も安くなるとは限らず、弁理士費用の合計額は各時点の費用の下限額の合計よりも高くなっています。

よって、意匠登録出願をして登録から4年間維持する場合、合計で約16万円~26万円程度の費用がかかることになります。

 

(4)調査の費用相場

調査の費用は、内容によって変わってきますので一概に相場がいくらと言いにくいものになります。

例えば、特許の先行技術調査や商標の登録性に関する調査費用は、大金をかけて行う必要性が乏しいため、比較的安く設定されることが多く、出願する場合にはサービスになることなどもあります。

一方、実施予定品の侵害予防調査や、他人の特許権の無効性調査などの費用は、比較的高くなります。侵害予防調査の相場は10万円~、無効性調査の相場は5万円~といったところかと思いますが、技術内容や調査すべき文献数、調査対象範囲(日本国内か外国か)などによって費用は変わります。

ざっくりと、侵害予防調査の費用は1050万円程度、無効性調査の費用は530万円程度と考えておくとよいと思います。

 

(5)コンサルティングの費用相場

コンサルティングの費用も、内容によって変わってきますので一概に相場がいくらと言いにくいものです。

コンサルティングの内容(高度性)やコンサルティングにかかる時間によって費用は変わりますので、それらに応じて時間単価で費用が設定されることが多いかと思います。

数多く、或いは定期的に依頼するような場合は、内容や時間に関わりなく一定の金額に費用を設定することもあります。

ざっくりと、時間単価が1万円~2万円と考え、それに所要時間を乗じた金額が相場になると考えておくとよいと思います。

 

(6)その他の業務の費用相場

その他の業務としては、鑑定、価値評価、侵害対応、裁判外紛争解決手続き(ADR)代理、訴訟共同代理などがあります。それらの費用も、時間単価に所要時間を乗じた金額が相場になると考えておくとよいでしょう。

時間単価は内容に応じて設定されることもありますし、担当者のレベルに応じて設定されることもあります。内容が高度な事案や担当者のレベルが高い場合に単価は高くなります。また、頻繁に行われる一般的な業務の単価は比較的安く、まれな業務の単価は、専門的知識が必要な高度な事案として比較的高くなる傾向があると言えます。

 

3.弁理士費用の節約方法

ここまで説明したように弁理士費用には幅があります。しかし出願人としてはなるべく費用を抑えたいと考えるのが普通です。以下では、弁理士費用を節約する方法について説明します。

 

(1)相見積もりを取る

最初に考えられる節約方法は相見積もりを取ることです。複数の特許事務所から見積もりを取ることにより、より安い事務所に依頼をして費用を節約することができます。

また、相見積もりをとらなくても、1つの事務所から見積もりを取ることでも費用の節約になることがあります。予め見積もり額が算出されていることにより、その範囲内で収まるように弁理士が工夫して作業することが期待できます。

なお、見積もりを取るに当たっては、依頼内容を正確に伝える必要があります。特許出願の場合であれば、発明内容の説明資料を提示することにより、見積もりが可能になります。商標出願であれば、登録したい商標と、商標を使用する商品やサービス(或いは、商標を使用する業務内容)を提示することにより、登録可能性や区分数がわかるようになり、より正確な見積もりが可能になります。見積もりを依頼する場合にはこれらの情報を事前に準備しておくようにしましょう。

ただし、見積もり内に特許出願手数料と一言で書いてあったとしても、それに含まれる相談時間や相談回数、発明内容の修正や追加に対する対応などのサービスは一律ではないため、その料金にどこまでの作業、サービスが含まれているかを確認することが大切です。

 

(2)助成金を利用する

自治体によっては中小企業の事業促進などのために、国内出願や外国出願、侵害調査、特許調査などに対して助成金制度を設けていることがあります。

例えば、東京都中小企業振興公社の東京都知的財産総合センターでは、東京都の助成金についてまとめられています。

助成金」(東京都知的財産総合センター)

このページの下部には、「中小企業の国内出願に対する助成制度」(都内自治体等実施分)がまとめられています。

これらの助成金を上手く利用することで、支出される弁理士費用を節約することができます。

 

(3)依頼をまとめる

互いに関連する複数の発明がある場合や、登録したい商標が複数ある場合、それらをまとめて同時期に依頼することにより弁理士費用を節約できることがあります。

特許出願では、明細書の全体又は一部を共通にすることにより、出願手数料を安くすることができます。依頼の時期がずれた場合にも、先の出願の明細書の一部を利用することはできますが、流用できないケースもありますので、できるだけまとめて依頼するとよいでしょう。

商標出願では、2件目以降の出願について割引を受けられることがあります。そのため、時間差をつけず、また、依頼を複数の事務所に分けず、1事務所にまとめて依頼するとよいでしょう。

 

4.まとめ

弁理士の費用についてまとめると以下の通りです。

  • 弁理士費用には、主に①手数料、②謝金、③実費がある。
  • 弁理士が行う業務ごとに、弁理士費用と特許庁費用とがある。
  • 特許庁費用を合わせて、特許は出願から登録までに合計で約50万円~100万円かかる。
  • 同じく、商標登録出願は10年間維持する場合、合計で約9万円~16万円かかる。
  • 弁理士費用を節約する方法はある。
  • 見積もりを取ってどこまで含まれているかを確認することが大切。
  • 助成金を上手く利用することで、弁理士費用を節約できる。

私たちの事務所では、特許、実用新案、意匠、商標出願をお考えの個人およびスタートアップ企業を支援するために、安心してご依頼いただけるリーズナブルなプランを提供しています。出願から将来のビジネス展開まで、私たち専門家がしっかりとサポートします。お気軽にご相談ください。ご相談はこちら

弁理士 立川 幸男

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