topics

トピックス

公開日:2023.04.20
更新日:2023.04.26

商標の『Ⓡ』マークって必要?ルールや『TM』、『SM』、『C(©)』との違いとは?

 たまに見かける、企業ロゴや商品名の横に付された『R(Ⓡ)』。このマークの意味をご存知でしょうか?

 今回は、この『R(Ⓡ)』の意味や表示義務、『TM』、『SM』、『C(©)』といったマークとの違いについて解説していきます。

1.『R(Ⓡ)』とは?

 『R(Ⓡ)』は、登録商標(Registered Trademark)の略、すなわち、登録商標であることを表すものです。

 もともとこの『R(Ⓡ)』は、米国において連邦登録された商標に一般的に付されているものです。表示義務はないものの、米国では連邦登録された商標に『R(Ⓡ)』を付していないと、侵害訴訟等において不利になることがあります。

 では、日本の登録商標の表示ルールはどうなっているのでしょうか?以下で解説していきます。

2.日本での登録商標の表示ルール

 日本の商標法では、登録商標を使用する際には、その商標が登録されたものである旨の表示(商標登録表示)を記載するよう努めなければならない(商標法73条)と規定されています。

 商標登録表示とは、例えば、『「商標名」(登録商標第○○号)』というような表示のことです。米国に倣い、登録商標であることを表示する場合に、『R(Ⓡ)』を使用することも慣例的に認められています。

 なお、商標登録表示は商標法でも「努めなければならない」と規定されているように努力義務であり、商標登録表示をしなくても罰則等はありません。

 また、商標登録表示をしなかったからといって、米国のように、侵害訴訟などにおいて不利になるということはありません。

3.商標登録表示のメリット

 では、登録商標に『「商標名」(登録商標第○○号)』といった表示や『R(Ⓡ)』を付す意味はないのでしょうか?

 そんなことはありません。登録商標に上記のような商標登録商標表示を行うことで、第三者が登録商標であることを認識することができます。したがって、第三者による商標権の侵害を未然に防ぐことができます。

 また、登録商標の普通名称化を防止する効果もあると考えられます。商標の普通名称化とは、ある商標が、もともとある企業の登録商標であったにもかかわらず、その商標があまりに有名になってしまったことにより、一般的に使用されるようになってしまうことを指します。

 普通名称化してしまった商標の例としては、「エスカレーター」(階段式昇降機)や「ういろう」(主に米粉と砂糖を蒸して作られる菓子)等が挙げられます。

 このような登録商標の普通名称化を防止し、自己のブランドとしての商標を守るためにも、登録商標にはできるだけ『「商標名」(登録商標第○○号)』といった表示や『R(Ⓡ)』を付す方が望ましいといえます。

4.『R(Ⓡ)』マークを付す場合の注意点

 商標登録表示のメリットについては上述した通りです。特に、登録番号を表示せずに登録商標であることを第三者にアピールできる『R(Ⓡ)』は、商標のロゴに含めてもあまりデザインに影響を与えないので使い勝手が良く、日本でも多く使用されています。

 しかし、『R(Ⓡ)』を使用する際の注意点もあります。それは、登録された商標にしか付すことができないということです。つまり、『R(Ⓡ)』は、出願中の商標等には表示することができません。

 その商標が登録商標であることを表示しなくても罰則等がないということは上述しました。しかしその一方で、登録されていない商標に商標登録表示をした場合には、罰則(「虚偽表示の罪」…3年以下の懲役、または300万円以下の罰金刑)があります。

 このように、未登録商標に『R(Ⓡ)』や「登録商標」といった表示を行うと罰則の対象になりますので、ご注意ください。

 では、出願中の商標であることを第三者にアピールするにはどうすればよいのでしょうか?

 ここで登場するのが、以下で紹介する『TM』や『SM』マークです。

5.『TM』マークとは?

 『TM』は、「Trademark」の略です。ここで重要なのは、『TM』には登録商標(「Registered Trademark」)は含まれないということです。

 したがって、出願中の商標であることを第三者にアピールしたい場合には、商標に『TM』を付することができます。

 なお、『TM』マークには法的な拘束力がなく、使用時期の制限等もありません。

 また、その商標が登録商標になった場合でも、『TM』を付していても問題はありません。

6.『SM』マークとは?

 『R(Ⓡ)』や『TM』と比べると見かける機会は少ないかもしれませんが、『SM』も商標に付されることがあります。

 『SM』は「Services Mark」の略です。『SM』は形のある商品ではなく、レストランや運送業などの形のない役務(サービス)に対する商標に付されるものです。

 『TM』と同様に、法的な拘束力はなく、登録商標に付しても問題はありません。

 また、役務商標に対して『TM』を付しても問題はありません。

 ここで、なぜ役務商標にだけ『SM』が存在するのか、疑問に思った方もいるのではないでしょうか?

 その理由は、役務商標の成り立ちにあります。もともと商標法では、形のある商品に対する商標(商品商標)しか認められていませんでした。しかし、役務に使用する商標が登録を受けられないのは不便であるという理由から、1991年の法改正により、役務商標の登録が認められるようになりました。

 このような背景から、法改正直後には、その商標が役務商標であることを示すために『SM』が付されることがありました。現在では、役務商標も一般的に出願/登録されているため、商品商標と役務商標を区別しない『TM』や『R(Ⓡ)』の方が使用されるようになりました。

7.『C(©)』マークとは?

 では、ここまで一度も登場していない『C(©)』とは一体何を意味するのでしょうか?

 『C(©)』は、「Copyright」の略です。これは、「著作権」を意味するものです。「著作権表示」と呼ばれることもあります。

 著作権は、商標権のように出願や登録を必要とせず、著作物の創作と同時に自然的に発生するものです。

 したがって、未登録/登録の区別なく、『C(©)』を著作権者(個人や会社)の表示の左横に付すことで、その著作権者に著作権が帰属することを表示することができます。

 なお、『C(©)』にも、法的な拘束力がありません。また、著作権が保護されるためには、上述したように、登録手続き等を必要としません(「無方式主義」といいます)。そのため、著作物に『C(©)』を表示しなくても、著作物は保護されているといえます。

 しかしながら、昨今では、創作物をSNSやWEBサイトなどにアップロードすることが一般化しています。『C(©)』を付すことで、自身の創作物であることを第三者にアピールし、第三者による著作権侵害を未然に防ぐ(牽制する)ことができる場合があります。

 なお、実は、著作権は登録することもできます。

 しかし、「著作権は著作物の創作と同時に自然的に発生する」と上述したように、登録手続きは著作権の発生には影響を与えません。したがって、特別な場合を除き、著作権の登録は必要ないと考えます(詳細については、別の記事で述べたいと思います)。

8.最後に

 『R(Ⓡ)』、『TM』、『SM』、『C(©)』マークの違いを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

 いろいろ長々と述べてしまいましたが、まとめると、以下のようになります。

  • 『R(Ⓡ)』は、登録商標を示すマーク。登録商標以外には使用不可。
  • 『TM』は、商標を示すマーク。出願中商標にも登録商標にも使用可。
  • 『SM』は、役務商標を示すマーク。出願中商標にも登録商標にも使用可。
  • 『C(©)』は、著作権を示すマーク。著作権は登録しなくても自然に発生する。

 商標への『R(Ⓡ)』、『TM』、『SM』マーク、著作物への『C(©)』マークを付する場合のご不明な点や、商標の出願や登録のご要望がある場合には、お気軽にご相談ください。ご相談はこちら

弁理士 由利 尚美

CONTACT

知的財産に関する様々なご相談に対応しています。
お気軽にお問い合せください。

Tel.03-3556-1861
受付時間9:00~17:00