ロゴマークは、企業等の製品やサービスを表すのに重要な意味を持っています。
今回は、この「ロゴ」とはなにか?というところから、ロゴの商標登録の必要性や注意点について解説していきます。
1.そもそも「ロゴ」とはなにか?
例えば、有名なロゴを思い浮かべたとき、いくつかのパターンがあるのにお気づきでしょうか。
一般的に、「ロゴ」といわれるものには、以下のような種類があります。
(1) シンボルマーク
シンボルマークは、企業や団体、商品やサービスを象徴する文字を含まない図案を指します。
(登録第5615488号)
(登録第6084697号)
(2) ロゴタイプ
ロゴタイプは、文字を図案化したものを指します。
(登録第5899793号)
(登録第5861649号)
(3)ロゴマーク
ロゴマークとは、シンボルマーク(図案)+ロゴタイプ(図案化した文字)の組み合わせを指します。
(登録第2098259号)
(登録第4477936号)
一般的に、「ロゴ」とは、上記のシンボルマーク、ロゴタイプ、ロゴマークの総称の意味で使用されています。
この記事でも、「ロゴ」=シンボルマーク、ロゴタイプ、及びロゴマークの総称という意味で使用していきます。
なお、ロゴ(マーク)がシンボルマークを指すものとして使用されることもあるようです。
2.ロゴを商標登録する意味とは?
では、このようなロゴを商標登録することにどのようなメリットがあるのでしょうか?
2-1. ロゴの役割
まず前提として、ロゴの役割(効果)についてお伝えしておきたいと思います。
ロゴの役割(効果)には、以下のようなものが考えられます。
- 需要者が、誰の商品やサービスであるかを視覚的に認識することができる
- 企業や団体、商品、サービスのコンセプトや特徴を込めることができる
- ブランドイメージを高めることに利用することができる
上述したように、ロゴは通常の文字とは違い、多少図案化されたものを指します。
人間は、一般的に文字よりも絵や写真の方が認識しやすいといわれています。
したがって、作成したロゴを長く、様々な場面で使用することは、企業や団体にとってのブランディング戦略に大きな影響を与えるといえます。
2-2. ロゴを商標登録するメリット
そして、そのようなロゴを商標登録するメリットとしては、以下のようなものが考えらえます。
- ロゴを他人に模倣されないため
- 他人の商標権を侵害しないため
- 識別力がない語や図形であっても、ロゴ化することにより保護されることがあるため
これらについては、以下で個別に解説していきます。
・ロゴを他人に模倣されないため
これは文字商標にもいえることですが、ある商品にロゴを付して販売してヒットしても、それを見た他人が、似たような商品に似たようなロゴを付して販売をし始めた場合、売り上げの減少等の損害を被るのはいうまでもありません。
また、その他人が同等の品質の商品を販売した場合には、単純に売り上げが落ちることになりますが、当該他人の商品の品質が劣悪だった場合、当該他人の商品を誤って購入してしまった需要者から苦情を受ける恐れもあります。
このようなことが起きないためにも、作成したロゴは商標登録によって保護しておく必要があります。
また、商標は、他の知的財産権である特許や実用新案、意匠等とは異なり、決まった存続期間がありません。
そのため、商標登録権者の意思さえあれば何度でも更新することができ、半永久的に保護を受けることも可能です。
したがって、特に、長く使う予定のあるロゴは商標登録しておくのが望ましいといえます。
・他人の商標権を侵害しないため
ご存知の通り、商標登録は自身の商標を保護するためのものです。そのため、これは一見矛盾しているようにも見えますが、非常に重要です。
他人の登録商標に類似する商標を使用した場合は、原則として、当該他人の登録商標を侵害しているといえます。
商標は、出願後、特許庁によって審査され、問題が無ければ登録されます。その審査においては、すでに他人によって登録された商標と類似していないかどうかという点についても判断がなされます。
したがって、<特許庁により登録された商標>=<特許庁から他人の登録商標に類似していないことが認められた商標>ともいえます。
つまり、商標登録されたロゴを使用している限り、原則として、他人の商標権を侵害しないことなります。
ただし、登録されたロゴであっても、使用態様(表示の方法や使い方)によっては他人の商標権を侵害してしまう恐れもあります。
また、侵害については個別具体的に判断されることに加え、侵害かどうかの最終的な判断を行うのは、あくまで裁判所となります。
そのため、特に「他人の似たような登録商標が既にあるけど、商標登録された」という場合には、使用態様に注意しておくと良いでしょう。
・識別力がない語や図形であっても、ロゴ化することにより保護されることがあるため
上記の2点とは少し性質が異なりますが、ロゴにはこのようなメリットもあります。
これはどういうことかというと、商標には、商標登録されない語や図形というものがあります。
詳しくは別の記事で述べたいと思いますが、ここでは一例を挙げて説明します。
例えば、誰かが果物の「りんご」に「りんご」「林檎」「Apple」、または(単純な)りんごの図形などの商標を登録してしまったら、全国のりんご農家さんや販売者の人たちは困ってしまいますよね。
このように、すでにある商品やサービスに対して一般的に用いられてしまっている語や図形等は、仮に登録されても誰の商標かわからないため、「識別力がない」等といいます。
識別力がない商標は、登録してしまうと多くの人に不都合が生じてしまうため、登録されません。
そのような語や図形を登録する必要が生じた場合には、ロゴ化することによって識別力を持たせ、登録できる可能性があります。
※この場合のロゴ化とは、特徴のある図形を組み合わせることや、そのような語や図形をすぐには判別できない程度に装飾したり図案化したりすること等を指します。
しかしながら、どのような図形を組み合わせればよいのか、どこまで装飾を加えるべきか、または図案化すべきか等の判断は非常に難しいものです。
このようなケースは、弁理士に相談することをお勧めします。
3.ロゴを商標登録するときの注意点
では、作成したロゴを商標登録するとき、注意するべき点について解説していきます。
3-1. ロゴの色について
ロゴを作成するとき、カラーバリエーションを複数用意することがあると思います。
そのうちのどの色彩のロゴを出願するか、悩むかもしれません。
原則として、使用する色彩のものを出願することが重要です。
しかしながら、使用する場面によってモノクロ表示をする可能性や、将来的に色彩が変更される可能性もあるかもしれません。
一方、予算の都合でモノクロかカラーのいずれか一方だけを出願したいということもあるかと思います。
その時は、以下のような観点で出願するカラーを選択してみてください。
例えば、特徴的な色彩や配色を使ったロゴで、使用するときは必ずその色を使用するという場合は、カラーで出願することをお勧めします。
色彩や配色が特徴的なロゴの場合、モノクロにすると印象が全く違って見えてしまう場合などがあり、そのようなケースではカラーで出願した方がよいといえます。
一方、色々なカラーバリエーションで使用する可能性がある場合や、色彩を変更する可能性がある場合には、モノクロでの出願をお勧めします。
例えば、使用する場面によって色を変更する場合や、新聞やカタログに載せる時にモノクロでの表示が想定される場合もありますよね。
そのようなケースでは、モノクロで出願しておくとよいでしょう。
・色違いロゴを他人が使用した場合はどうなるか
そもそも、商標は、商標法上の規定から、商標自体が同一または類似していれば、色彩が多少異なっていても、類似するものと考えられます。
権利行使が可能な商標は、他人の同一または類似の商標です。したがって、自身の登録商標と色彩だけが異なる商標を他人が使用していた場合には、権利行使をすることができる可能性が高くなります。
ただし、色彩が変更されることにより、印象がガラッと異なる商標(例えば、単色~複数色の「色彩のみからなる商標」)等は非類似と判断される可能性があり、権利行使できない可能性がありますのでご注意ください。
・色違いロゴを商標権者が使用した場合はどうなるか
また、商標権者が注意すべき点もあります。
商標法には、商標権者が登録後、登録商標を3年間使用していない場合に、第三者がその商標を取り消すための審判(不使用取消審判)を請求できる制度があります。
こちらも、商標法上の規定から、色彩が多少異なっていても、登録商標を使用していると判断される可能性が高くなります。
ただし、やはり色彩が変更されると印象がガラッと異なる商標等を登録したときの色彩とは異なる色彩で使用していたときに、登録商標の使用ではないと判断される可能性があります。
その場合には、不使用取消審判により商標が取り消されてしまう可能性がありますのでご注意ください。
3-2. 登録するロゴパターンについて
色彩と同様に、シンボルマークとロゴタイプの組み合わせで登録するべきか、あるいは、シンボルマークとロゴタイプを個別に登録すべきか、悩むかもしれません。
こちらも、以下のように、使用する様々なパターンについて出願しておくのがベストです。
(登録第3179992号)
(登録第3179993号)
(登録第3179994号)
(登録第4258264号)
しかしながら、ロゴの使用に際しては、シンボルマークとロゴタイプの配置が様々に変化することが想定されると思います。
そして、そのような全てのパターンの登録をするのは予算の都合等で難しいこともあると思います。
そのような時は、シンボルマークとロゴタイプとを個別に登録しておくことをお勧めします。
絶対に安全とは言い切れませんが、個別に登録することにより、シンボルマークとロゴタイプを個別に使用した場合だけでなく、それらを組み合わせたロゴも、保護される可能性が高いためです。
3-3. フォントの著作権について
ロゴを作成するとき、第三者が作成した有料フォントやフリーフォントを使用することもあると思います。
注意していただきたいのは、フォントによっては商標登録への使用が不可とされている(著作権者によって禁止されている)ことがある点です。
例えば、以下に挙げるのはロゴの作成によく使用されるフォントですが、商標登録を不可としているものや条件付きで可、としているものもあります。
・モリサワ
作成したロゴマークの商標登録・意匠登録は不可。
・フォントワークス
作成したロゴマークを商標登録する場合、申請前の契約(有償)及び図案の提出が必要。
・Adobeフォント
Adobe Fontsからアクティベートしたものであれば、商標登録が可能。
第三者が作成したフォントを使用したロゴを商標登録するときは、フォント提供元の規約等を必ずご確認ください。
4.まとめ
今回は、ロゴについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
いろいろ長々と述べてしまいましたが、まとめると、以下のようになります。
- 「ロゴ」とは、シンボルマーク(図案)、ロゴタイプ(図案化された文字)、及びロゴマーク(シンボルマーク+ロゴタイプ)の総称として使用されることも、それらを個別に指す意味で使用されることもある
- 他人の使用の防止及び他人の権利を侵害しないために、ロゴを作成したら商標登録した方がよい
- ロゴの色を変えて使用する可能性があるときには、モノクロで登録しておくとよい
- ロゴパターンにバリエーションがある場合、シンボルマークとロゴタイプとを個別に登録しておくとよい
- 第三者が作成したフォントを使用したロゴは、商標登録できないことがあるので注意
どのようなロゴなら登録されるのか、どのロゴで登録すべきなのかは、ケースバイケースであることがほとんどです。ロゴの商標登録については、お気軽にご相談ください。ご相談はこちら
弁理士 由利 尚美